僕と君と私の世界の物語

「お前は、ラキか?何でここにいる?」
 顔も声もキラそっくりで、でも明らかに別人のキラが目の前にいた。
「ラキって誰のこと?」
「お前だよ。お前、僕の髪色を真似したのか?」
 どう見ても目の前のキラらしい人物は黒髪で、僕の金色の髪色とは違う。
「君の髪の色は、黒色じゃないか?」
「ははっ。そうだよ。僕の髪色は黒色だ。お前が、僕の髪の色を盗んだんだ」
「えっ⁉︎盗んだってどういうこと?」
「呆れたな。盗んだ上に覚えていない振りをするのか?」
「僕は盗んでいない。それに、僕はラキじゃない」
「じゃあ、誰だよ?」
「僕はキラ。君は?」
 僕がそう言うと、目の前の僕は憎しみの目で睨みつけ、怒りで体が震えていた。

「お前がキラ?だったら、僕は誰だ?
 そこまでして、僕になりたいのか?」
「違う。僕は本当にキラなんだよ」
「僕に成りすまして僕の人生を奪った偽物が、本物の僕を騙せると思うのか?」
 きっと何を言っても、目の前の僕には信じてもらえない。
「君には、何を言っても信じてもらえないと思う。
 でも、僕はキラだ。
 今の僕は記憶が曖昧で、色々なことを忘れている。
 もしかして、君は僕の過去のキラじゃないのか?」
「何を言っている?どうして僕が過去なんだよ。
 じゃあ、お前は未来から来たのか?」
「分からない。でも僕は、キラという人物の記憶を持って生まれている。
 過去に何があったのか思い出せないけど、君を見ていると胸が痛くて苦しい気持ちになる」

 星のカケラに触って落ち着こうとしても、ザワザワとしたエネルギーを感じて、一層心が締め付けられる。

「ごめん。とにかくごめん。謝りたいんだ」
 どうしてか分からないが、謝らないといけない気がした。
「なぜ、お前が謝る?」
「君を助けてあげられなくて。きっと過去の僕は、悔やんでいるだろうと思ったから」
「お前が本当にキラかも分からないのに、勝手に謝られて迷惑だ」

(君からは、声にならない悲しみが伝わってくる。何があったのか分からないけど、きっと君はとても傷付いているんだね。だから、僕の言葉は、今の君には届かない)

「僕、ラキという人を探してみるよ。僕の世界で、何か分かるかもしれないし」
「無駄だ。
 キラである本物の僕と、僕に成り変わったラキ。
 キラとラキ。僕らは・・・・」
「えっ⁉︎何て言ったの?」

 目の前の僕の言葉を聞き取る前に、彼の体は暗い闇に覆われて消えてしまった。