僕は群集の中にいる。
 上空で、真っ赤に燃える大きな光のようなものが見える。
 そこに、真っ黒い巨大な渦を巻いたものが近付いて、飲み込もうとしている。
 人々は右往左往して、必死に逃げ回っている。
 僕も逃げたいのに、体が固まったように動かない。
 僕は群集の波に押され、押し潰されそうになっている。
 息苦しくて、もがいても抜け出せない。
 上空の巨大な黒い渦がどんどん近付いてきて、人々を飲み込もうとしている。
 僕もその中に吸い込まれそうになった瞬間、「はっ!」として目が覚めた。

 僕の心臓の鼓動は、僕の耳元まで聞こえるぐらい大きく早打ちしている。
 僕の左手は、無意識に首元を掴んでいる。
 僕は背中を丸めて、荒く何回も息を吸う。

(どうしたんだろう? ただの夢なのか? 
 今日、記憶図書館で見た映像のせいだろか? あの時と同じ場面を見ているのか? 
 もしかして、これは僕の過去の記憶なのか?・・・・)

 ぐるぐると、取り留めのない思考が頭の中に浮かぶ。
 それでも、ゆっくりとした呼吸を繰り返していると、少しずつ落ち着きを取り戻してきた。

(今日見た映像は、何かのメッセージかもしれない。もっとよく調べてみないと・・・・)

 キラはもう一度寝ようとしたが、さっきの夢が頭から離れなくて、なかなか寝付けない。
 少しでも早く眠りたいと思って、頑張って眠ろうとすればするほど、逆に思考がはっきりとして余計に眠れない。
 ようやく、うとうとしかけた頃には、朝方になっていた。