さっきまで空間中にあったフィルムの映像は、すべて消えていた。

(さっきの出来事は夢だったのか?)

 そう思って、首に手を当ててみる。

(いいや、あれは現実だった。僕は本当に殺されそうになっていた・・・・)

 まだ心臓がドキドキして、収まらない。

(一体どうなっているんだ?どうして、僕はあの人たちに恨まれているのだろう?)
(さっき、僕の腕を掴んだ人が「お前のせいだ」と言った。僕は何をしたんだ?分からない・・・・)

 深いため息をつきながら考えていると、ステータスボードにみんなからのメッセージが届いた。

「もうそろそろ戻る時間か」

(とりあえず、一旦戻って、状況を確認しよう)

 キラはみんなと合流するため、ドアの外へ出て集合場所へと向かった。

「みんなどうだった?」
「俺は特に何もなかった」
 ルタの問いかけにアレスが答える。

「私は野うさぎを追いかけていたよ」
「えっ?野うさぎ?」
「うん。部屋中にたくさんいて、原っぱみたいな所で追いかけっこしてたよ」
 ピアの言葉に(空想好きなピアにはぴったりだ)とみんなが思った。

「俺たちは鳥さんたちだった。綺麗なハーモニーで歌う鳥たちを眺めながら、のんびりしてた」
 双子たちは、同じ空間に行けて喜んでいる。

「私は、なぜか海に向かって『バカやろうー!』と叫んでいた」
「それって、いつものことじゃね⁉︎」
「えっ⁉︎何でよ?いつも言ってないけど⁉︎」
 ルタの言葉に、当然のように嫌味を言うアレス。

「私は、何か不思議な巻き物を広げていて、中にある文字を読もうとしていた」
「それで読めたの?」
「見たこともないような文字で、意味が分からなかった」
 アクナは「どうせなら、キラ様の巻き物が良かった!」と不満げだ。

「私は料理人のように、大皿にたくさんの料理を作っていた」
「へえー、美味しそうだね!」
 キャミは(優しくて料理も上手だよね!)とみんなが納得している。