記憶図書館は不思議な場所だ。
 その場所の中央には、大きな大きな大木と泉があり、その大木を中心として、空間全体に数えきれないほどのドアが浮き上がっている。
 そのドアの向こう側に、記憶が保存されている。出入りは自由で、どのドアを選んでも大丈夫だ。

 この場所にある大木と泉の姿・形は、これまた不思議だ。
 これは「創造の木」と言われ、「はじまりの場所」と呼ばれる創造主がいる所にある大木と非常に良く似ている。
 それもそうだ。 すべて似せて作っているからだ。
 その上、すべてが水で作られていて、無色透明な大木の内部には、透き通った水が流れ、キラキラと光っている。
 
「うわー、すごーい!」
「いっぱいドアがあるねー」
「本当!ありすぎて迷うね!」

 初めて立ち入った記憶図書館の大木と泉とドアに圧倒される。
 みんなは、キョロキョロとあちこちを見渡しながら「すごい!すごい!」と驚嘆している。

「ねえ、この木って不思議じゃない?木なのに水で出来ている?手をかざしても、水に濡れないね」
「うん。すっごく不思議だね」
 ルタの言葉に、キャミも頷く。
「水の中にキラキラと光っているのは何かな?」
 綺麗な物には目がないアクナは、大木に両手をつけ、顔を近付けて見入っている。
「宝石?クリスタルかな?」
「キラキラと光って、綺麗だね」
 ピアもアクナの真似をして、キラキラとした光を見ている。

 大木の上空を見ていたカルが
「ねえ、ねえ、大木から何かが飛び出してくるよ!」
 その声で、みんなが上空を見上げる。
「あー、本当だ!しゃぼん玉?」
 カルの声にポールは指を指す。見上げた大木から、たくさんの丸い玉がぽんぽんと生み出されていく。
「どこまで飛ぶんだ?ドアか?」
 視力のいいアレスがしゃぼん玉を目で追う。
「ドアの中に入ったぞ!」
 アレスの言葉にルタが驚く。
「うそー?何あれ?消えたの?それとも通り抜けたの?」
「あれ、何だと思う?」
「何だろうね?」
 ルタの驚きと同じく、他の女性陣も首を傾げている。

 キラはみんなの声が聞こえていたが、丸い玉を見ていると、自分の体の中の水が反応して、ちゃぷちゃぷと飛び跳ねているように感じた。