こんな日常会話が出来るなんて。
 どうでもいいことを、ワイワイガヤガヤとみんなで話をしている時間が、とても嬉しい。
 平和だな。この世界は、本当に平和だ。

「こんな平和な日々が、ずーっと続きますように」

 これは本音だ。さっきまで見ていた夢の影響だろうか?

 僕は、別の世界で生きていたことがある、と分かる。
 その時のことは良く覚えていないけれど、みんなと一緒にいると、別の世界の僕の気持ちと重なることがある。
 その思いは、今の僕が感じている思いじゃなくて、別の時代に生きていた僕の思いが僕の魂に残っていて、今の僕に何かを伝えているんじゃないかと考えてしまう。

『みんなに会いたかった。話したかった。一緒にいたかった』

 きっとこの思いは僕の魂の望みで、心の奥深くにしまっていた本音。
 誰にも打ち明けることも出来ずに、ずっと胸の奥にしまったまま、あることさえ忘れていた気持ち。
 僕が、感じることさえ許されなかった切ない感情と伝えられなかった愛しい願い。
 あの頃の僕には、思うことも、願うことも、望むことも、祈ることも叶わなかったから。

 そんな僕を、今度は僕自身が守りたい。
 僕はそのために生きている。
 僕が僕自身の魂の真実を解放するために、命をかける。
 僕は今度こそ、僕の魂を救うんだ!

 僕の今回の物語は、そのためにある。
 僕はもしかしたら、僕自身の最大の敵(障害)になるかもしれない。

 僕は今から、別の僕の人生に干渉していく。
 僕の魂を解放するために、僕は僕に戦いを挑んでいく。
 例え、どんな結末になったとしても、僕は後悔しない。

 何も出来なくて、悔しくて、辛くて、苦しくて、悩んで、惨めで、怒ることさえ諦めた、あの時の僕を
 孤独で1人ぼっちで、誰にも頼れない、誰のことも信じられない、と心を閉ざしてしまった僕を迎えに行くんだ。

 何もしないで後悔するなんてイヤだ。だから、僕は僕の願いを叶える。
 今度こそ信じる。
 僕たちの魂は、永遠に繋がっているのだということを。
 この世界は希望に満ちていて、「創造力」は無限の可能性があるということを信じている。

 僕はもう大丈夫だ。みんながいる。僕はみんなの側に戻ってこれた。
 あの時も、みんなはいつも僕と一緒だった。
 僕がどんな状況でも変わらず側にいて、僕を信じて待っていてくれた。
 今度は、僕がみんなを信じて一緒に運命に立ち向かい、宿命を乗り越えて行く番だ。

 キラが、心の中で強く決意すると

「戻って来たんだね。新しい世界に。良かった・・・・」

 話しかけてきたのは、僕だ。姿・形は違うけど、僕だと直感的に分かった。

「今の君の思いは、一旦、忘れることになる。でも、それでいいんだ。きっと後で、すべて思い出すから。だから、君の物語を信じて」

 そう言って、目の前の僕は、静かに笑った。笑顔の中に寂しさが混ざったその表情を見ていると、僕の心は切なさで苦しくなる。

「君の心が泣いている」そう感じて、「分かった。君を信じるよ」と僕は答えた。

 僕の言葉を聞いて、目の前の僕は少し安心したような顔で、霧のように消えて行った。