「……え?」

「おはよ……起きた? びっくりしたよ」

 思わず漏れた声に返事がして私が振り向けば、そこに座っていたのは別に知らない顔でもなくて、行きつけの近所のカフェの店員だった。

 そのカフェはカフェと言っても、夜専門の夜カフェ。

 十八時から早朝まで空いている珍しいカフェで、もうご飯作りたくないとか、飲みの後ですぐに家には帰りたくない気分の時とか……何もする気にも起きない、まったりしたい時に私は使っている。

 彼はダブリエ姿もいかしたイケメンの店員さんだとこっそり注目していた人で……少しだけ喋ったことがあるのは、事前会計だからレジで注文した時と時間の掛かる料理をサーブして来た時くらい。

 そのカフェのシンプルな制服には名札もないので、名前すら知らない。