けど、なんか……やっぱり、冬馬さんってすごく良い匂いがする……こうして抱きしめられると、より濃厚な匂いに包まれた。

「はー……冬馬さん。良い匂い」

 呟いて見上げた冬馬さんの整った顔は、私の頭を撫でつつ、おかしいぞと言わんばかりの微妙な表情になっていた。

「ていうか……もしかして、まゆちゃんって……俺より上位種の、まだ覚醒していない、魔物の幼生じゃないよね?」

「……え?」

 隣に横たわった冬馬さんは、荒い呼吸の止まらない私の顔をじっと見て、何か悩ましい表情になっていた。

「だって、闇が好きだし……わずかでも光があると、眠れないんだよね? ……俺から何か美味しそうな匂いするってことは、吸血鬼のことを捕食対象にしている大物なのかも」

「まっ……まさか」

 ……え。吸血鬼を食べるって、どういうことなの?

「俺がさ。まゆちゃんから良い匂いして、美味しそうだと思うのはわかるよ。だって、俺は君を捕食する側だから。けど、俺から良い匂いがして美味しそうに思えるってことは……うーん」

「な、何か心当たりあります?」