念押しして確認するように聞き返されたので、私は嬉しくなって何度も頷いた。

「けど、おかしいな……俺の暗示が解けるなんて、これが人生で初めてだよ」

 片手で頭を押さえた冬馬さんは手招きをして、二人がけのソファへ座るように私を促した。

「あのっ……私。実は、冬馬さんの挨拶の声を偶然録音していて、それを目覚まし代わりに使っていたんです。それを聞いて、なんだか思い出せちゃって……」

 冬馬さんの隣に座りつつ、何故消されたはずの記憶が戻ったかを説明すると、彼は驚いたように私を見た。

「……え? 俺の声を?」

「そうなんです……おはようを、モーニングコール代わりに。なんだか、本当に冬馬さんが好き過ぎて……ごめんなさい」

「それって、謝るところではないよね? なんか、素直に嬉しい。うん。好き同士だし……俺も覚悟を決めるか」

「ありがとうございます!」

 どうやらこれで晴れて冬馬さんと恋人になれた私は、嬉しくて彼に抱きついた。

「苦労するぞー……吸血鬼の恋人になったら」

 そんなの覚悟の上だし、逃げたいなら、もう逃げてるのに。