「いらっしゃいませ。今日は店内で、食べられますか?」

 冬馬さんは、いつも通り店員の笑顔だった。ひどい。ものの見事な他人の振り。

「あのっ……私、冬馬さんと生きることにしました。これからも一緒に居たいです!」

 その時に冬馬さんはひどく驚いた顔になった後、周囲の目を気にしつつ、私の腕を引いてバックヤードにまで連れて来た。

 あれは、他の店員さんもみんな聞いていた。これだとなかった事にするには手間がかかるだろうと思った。

 少しずるかったかもしれないと思い、何も言えない私をまじまじと見つめた後で、冬馬さんは、はあっと大きくため息をついた。

「……嘘だろ。俺が消した、記憶が戻ったのか……まゆちゃん、後悔するぞ」

 脅すような言葉を使われても、別にここで引いたりしない。

 覚悟はもう、決めてきた。

「絶対に、後悔はしないです。もし、両思いで冬馬さんの恋人になれるなら」

「……本当だな?」

「はい!」

「俺の事、そんなに好きなの?」

「……はい!」