流石に棺桶の中に居ると音は聞こえないけど、蓋を空けたら彼が私に挨拶してくれたら最高だと思った。

「やばい……私としたことが、こんなにも乙女なことをしでかしてしまうなんて」

 一瞬だけ我に返ったけど、恋に落ちた自分は、まだ帰って来ていない。

 社会人になってからの恋愛なんて、まだまだ遠いと思っていた。

 日々の仕事を安定させてからなら、恋愛はまだ先で……キャリアを安定させて結婚なんて、もっともっと先。

 けど、私以外の誰も聞くことのない独り言は、狭い一人部屋の中にただ消えていった。