「……すごい」

 私は冬馬さんの得意気な顔を見て、こんなにも有難いことをしてくれた彼に、何をお礼すれば良いか考えていた。

 少ないけど、私の口座の貯金を全部渡す……?

 ううん。さっき冬馬さんは、お金は要らないって言っていたし……。

「あ。待って。まゆちゃん。動かないで」

 私は彼の唐突な言葉に首を傾げると、冬馬さんは跪いて私のスニーカーの靴紐を結んでくれた。

 どうやら片方だけ、靴紐が解けてしまっていたらしい。

「わ。なんだか、お姫様みたい。ありがとうございます……」

 ピンチを救ってくれたイケメン王子様にかしずかれるなんて……今までにやって来た過去の善行が、大事なところで火を吹いてくれたのかもしれない。