「見ててわかると思うけど……俺は血を吸った直後、相手の行動を操ることが出来る。記憶だって消せる。だから、もうあいつはまゆちゃんのことを、完全に忘れてるから」

「嘘……すごい。ありがとうございました」

「うん。解決して良かったね。あー、まず……うげ。きもちわる。最悪な味だわ」

 男の背中が見えなくなるくらいに去った後、冬馬さんは口の中にあったツバを道へ何度か吐き出した。

「え……人の血にも、美味い不味いがあるんですか?」

 血を舐めたことはないけど、冬馬さんがそう言うのならそうなのだろうか。

「そう。俺の持つ好悪で、味が変わるんだ。あいつはまゆちゃんに何年も付き纏う嫌な奴で、なんか死ぬほど嫌いだから、くそまずい」

 心底そう思って居る様子で、冬馬さんは不機嫌に言った。

 吸血鬼って、自分の好悪で血の味変わっちゃうんだ……だから、若い美女を狙うって、言われているのかな?

 若い美女を嫌いな人は、とても少なそう。