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 冬馬さんは何年も望んでいない相手からの執着に苦しんできた私を救ってくれる、まるで白馬に乗り現れた王子様のようだった。

 これまで何年も酷い執着を向けていた男は、待ち合わせの公園で私以外の思ってもみなかった第三者の存在に警戒心を隠さない。

 とりあえず握手をしようと、きさくに冬馬さんは彼に向けて手を差し出した。

 感じ良く握手しようと言われ断るのもと思ったのか、戸惑いながら出した腕を捕まれ素早く噛まれた後、彼はぼうっと意識なく冬馬さんの言いなりに動くようになっていた。

「良いか。この女性のことは、何もかも忘れろ。まゆちゃんを記録しているものは、すべて消すか捨てろ。そして、二度と連絡せずに近付くな。理解出来たら、行け」

「わかりました」

 まるで動きの決められたロボットのように、ぎこちなく頷いた彼は、冬馬さんに命令された通り去っていった。