「えっと、今のところは……」

 だって、助けて貰って怖いこともされてないし。日光があまり好きじゃないカフェを開くという夢を叶えた青年ということしか、まだ彼のことを知らない。

「へー……そうなんだ」

 私の呑気な発言を聞いて、拍子抜けした表情を見せた彼は大袈裟に肩を竦めた。

「あ……もしかして、これから私の血を飲みます?」

 確かに彼にはお世話になったし、お礼の献血くらいの気持ちなら、大丈夫。

「……なんか、誤解があると思うけど、吸血鬼は血だからなんでも良いって訳じゃないから。そっちもゲテモノは、敢えて食べたりしないでしょ」