お父さんが亡くなったのは私がまだ小学三年生の頃。
お父さんが亡くなったあの頃から私は何度も思ったことがある。

「もっと色々知りたいことがあったのに。話したいことも沢山あるのに。」

私は父について何も知らない。趣味も好きな食べ物も好きな色も嫌いな食べ物も嫌いなことも。お母さんでさえ知らないこともある。好きな人の話をしてみたかった。思春期に体験する父への嫌悪感も知りたかった。お父さんっ子だからあったか分からないけど。

お父さんが亡くなってから早7年。匂いも声も顔もまともに覚えているものなんてない。何をしてくれたのかも、どんな人だったのかも。
死因だって詳しくは知らない。病院嫌いなお父さんは持病持ちだったのかもわからない。本当に知っていることが少なくて悲しくなる。学校でみんなが家族の話をする時、私のお父さんの話は全部過去のことと私の理想でしかない。「こんなお父さんがいいな」そんな理想を詰め込んだ幻想のお父さんより本当のお父さんのことを話したい。

でもそれは一生叶わない願い事。