「皆、僕のことを親の仇かってくらい嫌ってるんだと思ってた」
「そんなわけないじゃん。文也くんのこと嫌う理由がないし」
「僕が知らないうちによくないことしてたかもしれないと思って」
「人間って文也くんが思ってるより寛容なものだよ」

 詩音さんの言葉に頷く。

 どうやら、僕は悲観しすぎていたのかもしれない。

 二人組が僕の方へやってきた後、山咲さんが受賞のことを言い触らした影響からか、他にも多くの人たちが僕のところを訪れた。

 彼らは皆僕のことを称えたり、好意的に話しかけてくれる。

「七瀬くん、小説書いてるって本当?」

 また、別の生徒が僕の元へやってきた。

「うん、本当だよ」

 そう返事するのに、恐怖はもうない。

 なんと言われたとしても、僕を認めてくれる人はいるから。

「――かっこいいね!」

 僕は照れくささを隠しながら笑った。

 詩音さんも、笑っていた。