「文也くん。今日この後、一緒に新作の作業をしたいんだけど、どうかな?」
「僕は構わないけど、どこでやるの?」

 僕はてっきり、図書館とか喫茶店で作業をすると思っていて、それであれば人が周囲にいて集中できないかもしれないと思っていた。

 しかし、詩音さんはそう考えてはいなかったらしい。

「私の家とか?」
「家? 図書館とか喫茶店とかじゃなくて?」
「私もそこは考えたんだけど、どうして周りに人とかがいるから、私はあんまり得意じゃないんだよね……」

 詩音さんも僕と同じ考えだったようだが、詩音さんの家に場所を決定した理由が果たしてそれだけなのか、僕は少し疑わしいと思った。

 でも、詩音さんの家にお邪魔するのは、嫌だというわけではなく少し楽しみだ。

「そっか。じゃあ、うちへ帰らずに詩音さんの家に寄ってもいい?」
「もちろん」

 詩音さんは嬉しそうに笑った。