「者ども、止まれぃ!」
Orangeパークの巨大なビル前の広場にやってきたアントニオは、いつの間にかできていたビルを囲む高い石の壁をにらみ、忌々しそうに声をあげた。
ジェラルド陣営側もこうなることを予見して布石を打っていたということだろう。
整列させられた歩兵たちの荒い息遣いが広場に響いた。
「やぁやぁ皆さん、朝早くからご苦労さん!」
ジェラルドの声が広場に響き渡る。
見上げればOrangeパークビルの中ほどに設けられた巨大スクリーンの中で、ジェラルドがにこやかに笑っていた。
「貴様! 父上殺害の重大犯罪人がいけしゃあしゃあと何を言っておるか!」
アントニオは剣をスクリーンに向け、吠えた。
「私は昨晩は自分の寝殿におりました。では、ここで父上が殺害された時の監視カメラの映像を見てみましょう」
大画面に映し出されたのは寝殿の入り口で警備兵が警備しているシーンだった。
「今朝の未明四時二十三分の映像です。この時点では何の異状も見られませんね。ところが、見て下さい。一人の大男がやってきました……。あっ! いきなり惨殺!」
おぉぉぉぉ……。
兵士たちに動揺が走る。
「今のシーン拡大しますよ。見て下さい、どこかで見た事ありませんか? この大男? あれぇ? アントニオじゃないですかぁ! この直後父上は殺された。誰がやったかだなんて子供でも分かりますよね?」
「な、なんだこの映像は! こんなのは知らん! 捏造、そう、捏造だ!!」
「これは王宮警備システムで撮影、管理しているものであって、王宮でそのまま見ることができます。我々はもらっただけですよ? くふふふ……」
ざわつく兵士たち。もし、これが本当であれば、アントニオは国王殺しの重犯罪人。そうであれば、その指示に従って攻めた自分たちには正義はないのだ。
「ふん! 誰が殺したかなど関係ない! 要は強いものが統べるのだ! 尋常に勝負しろ!!」
アントニオは意に介さず剣を高々と掲げ、吠えた。自分には五千人の王国最大の武力がある。どんな無理難題でも最後は武力で解決してしまえばいいと考えていたのだ。勝てば官軍負ければ賊軍、それが世の常なのである。
「僕は武力はからっきしなんでね。ここからはグレイピース男爵が相手になろう」
ジェラルドは肩をすくめるとカメラをタケルに切り替えた。
「皆さんこんにちは。Orange代表取締役のグレイピースです」
タケルはスーツ姿でニッコリと笑いながら挨拶をする。
攻め込んできた相手に笑顔で挨拶するこの若い男は一体何をするつもりなのか、五千人の兵士たちは首を傾げた。
「皆さん、Orangeでは皆さんのような人材を募集しています。月給は金貨にして十枚、どうです? いい仕事だと思いませんか?」
なんとタケルは嬉しそうにリクルーティングを始めたのだ。
「えっ? 十枚?」「こ、これは……」「ど、どうする……?」
タケルに兵士たちはざわついた。兵士たちの給料は金貨2~3枚。いきなり五倍を提示されては穏やかではいられない。
「何を言っている! お前の会社は今日、この世から消えるんだぞ!!」
アントニオは顔を真っ赤にして吠えた。これから血で血を洗う戦闘だというのに、給料の話を始めるタケルは騎士道に反する卑怯者にしか映らなかった。
「検討手付金をまずはお支払いしますね」
タケルがそう言うと、バシュッ! と衝撃音がして、キラキラ光る粒が一斉に空を覆いつくした。
「な、なんだ!?」「こ、攻撃してきたぞ!」「いや、違う……こ、これは……」
「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」
空を覆いつくさんばかりに振りまかれた黄金色にキラキラと輝く膨大な量の金貨。兵士はもはや軍規などどうだってよくなっていた。先を争うように降ってくる金貨をつかみ、散らばった金貨を先を争うように拾い集める。
「なんだ! お前ら! 何をやってる! 隊列を乱すな!!」
アントニオは吠えたが、目の前に降り注ぐ金貨を見て正気を保てるものなどいない。将校ですら馬を降り、金貨を集め始めてしまっている。
「入社希望者はアークスカイ・モールのフードコートにてスタッフから申込書を受け取ってください。わが社は公明正大でクリーンな社風、パワハラもないやりがいのあるお仕事をご提供しています。皆さまのご応募をお待ちしております」
タケルはニッコリと笑いながらモールの方を指さした。
兵士たちは一瞬、周りの人たちと顔を合わせたが、一人、また一人とモールの方へ走りだすとやがて大挙してモールの方へ移動し始めた。
「貴様らぁ! 敵前逃亡は死刑だぞ!!」
アントニオは怒って剣を振り回すがもはや誰も聞くものはいない。まさに『金こそパワー』、タケルは武器の代わりに膨大な金貨を使って国王軍を壊滅させたのだった。
Orangeパークの巨大なビル前の広場にやってきたアントニオは、いつの間にかできていたビルを囲む高い石の壁をにらみ、忌々しそうに声をあげた。
ジェラルド陣営側もこうなることを予見して布石を打っていたということだろう。
整列させられた歩兵たちの荒い息遣いが広場に響いた。
「やぁやぁ皆さん、朝早くからご苦労さん!」
ジェラルドの声が広場に響き渡る。
見上げればOrangeパークビルの中ほどに設けられた巨大スクリーンの中で、ジェラルドがにこやかに笑っていた。
「貴様! 父上殺害の重大犯罪人がいけしゃあしゃあと何を言っておるか!」
アントニオは剣をスクリーンに向け、吠えた。
「私は昨晩は自分の寝殿におりました。では、ここで父上が殺害された時の監視カメラの映像を見てみましょう」
大画面に映し出されたのは寝殿の入り口で警備兵が警備しているシーンだった。
「今朝の未明四時二十三分の映像です。この時点では何の異状も見られませんね。ところが、見て下さい。一人の大男がやってきました……。あっ! いきなり惨殺!」
おぉぉぉぉ……。
兵士たちに動揺が走る。
「今のシーン拡大しますよ。見て下さい、どこかで見た事ありませんか? この大男? あれぇ? アントニオじゃないですかぁ! この直後父上は殺された。誰がやったかだなんて子供でも分かりますよね?」
「な、なんだこの映像は! こんなのは知らん! 捏造、そう、捏造だ!!」
「これは王宮警備システムで撮影、管理しているものであって、王宮でそのまま見ることができます。我々はもらっただけですよ? くふふふ……」
ざわつく兵士たち。もし、これが本当であれば、アントニオは国王殺しの重犯罪人。そうであれば、その指示に従って攻めた自分たちには正義はないのだ。
「ふん! 誰が殺したかなど関係ない! 要は強いものが統べるのだ! 尋常に勝負しろ!!」
アントニオは意に介さず剣を高々と掲げ、吠えた。自分には五千人の王国最大の武力がある。どんな無理難題でも最後は武力で解決してしまえばいいと考えていたのだ。勝てば官軍負ければ賊軍、それが世の常なのである。
「僕は武力はからっきしなんでね。ここからはグレイピース男爵が相手になろう」
ジェラルドは肩をすくめるとカメラをタケルに切り替えた。
「皆さんこんにちは。Orange代表取締役のグレイピースです」
タケルはスーツ姿でニッコリと笑いながら挨拶をする。
攻め込んできた相手に笑顔で挨拶するこの若い男は一体何をするつもりなのか、五千人の兵士たちは首を傾げた。
「皆さん、Orangeでは皆さんのような人材を募集しています。月給は金貨にして十枚、どうです? いい仕事だと思いませんか?」
なんとタケルは嬉しそうにリクルーティングを始めたのだ。
「えっ? 十枚?」「こ、これは……」「ど、どうする……?」
タケルに兵士たちはざわついた。兵士たちの給料は金貨2~3枚。いきなり五倍を提示されては穏やかではいられない。
「何を言っている! お前の会社は今日、この世から消えるんだぞ!!」
アントニオは顔を真っ赤にして吠えた。これから血で血を洗う戦闘だというのに、給料の話を始めるタケルは騎士道に反する卑怯者にしか映らなかった。
「検討手付金をまずはお支払いしますね」
タケルがそう言うと、バシュッ! と衝撃音がして、キラキラ光る粒が一斉に空を覆いつくした。
「な、なんだ!?」「こ、攻撃してきたぞ!」「いや、違う……こ、これは……」
「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」「金貨だ!」
空を覆いつくさんばかりに振りまかれた黄金色にキラキラと輝く膨大な量の金貨。兵士はもはや軍規などどうだってよくなっていた。先を争うように降ってくる金貨をつかみ、散らばった金貨を先を争うように拾い集める。
「なんだ! お前ら! 何をやってる! 隊列を乱すな!!」
アントニオは吠えたが、目の前に降り注ぐ金貨を見て正気を保てるものなどいない。将校ですら馬を降り、金貨を集め始めてしまっている。
「入社希望者はアークスカイ・モールのフードコートにてスタッフから申込書を受け取ってください。わが社は公明正大でクリーンな社風、パワハラもないやりがいのあるお仕事をご提供しています。皆さまのご応募をお待ちしております」
タケルはニッコリと笑いながらモールの方を指さした。
兵士たちは一瞬、周りの人たちと顔を合わせたが、一人、また一人とモールの方へ走りだすとやがて大挙してモールの方へ移動し始めた。
「貴様らぁ! 敵前逃亡は死刑だぞ!!」
アントニオは怒って剣を振り回すがもはや誰も聞くものはいない。まさに『金こそパワー』、タケルは武器の代わりに膨大な金貨を使って国王軍を壊滅させたのだった。