「それではOrange代表、グレイピース男爵より、新製品のご紹介をいただきます!」
お姉さんの紹介で、タケルは緊張しきったガチガチの状態でステージへと進む。
うぉぉぉぉぉ!
一気に盛り上がるスタジアム。
数万人の観客が、興奮に包まれながらタケルの一挙手一投足に熱い視線を寄せている。タケルはその熱狂ともいうべき熱いエネルギーのルツボに軽いめまいを覚えた。ちゃんと話せるだろうか? みんなを納得させられるだろうか? 震えの止まらない手、もう誰も自分を助けることはできない。このステージはタケルのための晴れ舞台、自分が最高のプレゼンを見せるしかないのだ。湧き出してくる不安に押し流されそうになりながら一歩一歩マイクのところへと歩いていく。
その時、クレアが向こう側で心配そうに手を組んで、タケルを見守っていることに気がついた。
その瞬間、なぜかタケルは『この娘が祈ってくれるから大丈夫だ』という何の根拠もない不思議な確信に包まれていくのを感じた。
『あぁ、自分は上手くやれる。わが師ジョブズのように堂々と話せばいいだけだ』
その瞬間、タケルはジョブズが乗り移ったかのように堂々とした笑顔となる。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!」
タケルは観衆に向かって大きく手を振る。
うぉぉぉぉぉ!
観客たちもそれに応えた。
「前回、このスタジアムを熱狂にうずめたのはテトリスでした。そして今日、皆さんに、その熱狂を超えるものをご覧いただきます!」
タケルが腕を突き上げると、背景の大画面にドンとスマホ【フォンゲート】の映像が登場した。
おぉぉぉぉ……。
見た目はテトリスと同じだが、画面には王宮の風景が映っている。
「ジェラルド王子殿下、聞こえますか!?」
タケルが背景の大画面に向かって叫ぶと、画面に王子が登場した。サラサラと美しいブロンドを陽の光で煌めかせ、美しい顔には真紅の瞳が輝いていた。
「男爵、聞こえるぞ。会場の皆さん、盛り上がってるかぁ!?」
王子は大きく手を振った。
わぁぁぁぁぁ!
王宮に居る王子が自分たちのことを見て手を振っている。それは思ってもみなかったサプライズで、観客は喜んで手を振り返した。
「この端末はこうやって遠くの人と話をすることができるのです。名前は【フォンゲート】。今日、Orangeが皆さんの暮らしを一変させます!」
うぉぉぉぉぉ!
遠くの人と話をすることができる。それも相手の顔まで見える。それはこの世界の人たちにとって信じられないイノベーションだった。今まで手紙や伝言しかなかった不便なコミュニケーションが、フォンゲートならまるですぐそばにいるようにできるのだ。これが、私生活を、ビジネスを一変してしまう可能性に観衆は大きく湧いた。
「さらに! フォンゲートはお財布にもなるんです!」
画面の中で王子はデモ用の屋台へ行き、一輪の赤いバラを買い、QRコード決済で支払った。
チャリーン!
効果音が鳴り響き、店主はグッとサムアップ。
「はい、これだけで買い物ができてしまいます。この【QRコード決済】は主要な商店ではすでにご利用になれます。そして、キャンペーン期間中はなんと全て20%オフ! 何を買っても2割引きですよ? ぜひ、フォンゲートでお得な買い物を!」
うぉぉぉぉぉ!
実は硬貨での支払いは市民にとって頭の痛い問題だった。なぜなら金や銀の含有率の低い贋作コインが多数流通しており、店によっては受け取ってもらえないことがあったのだ。QRコード決済ならそんな不安なく、なおかつ2割引きとあらば使わない手はない。
「さらに! 知らない人とも友達になれるSNS、フォンゲートで買い物ができてしまうECサイトなども続々登場予定です! そして気になるお値段ですが……、いくらだと思いますか?」
ざわざわと観客席は期待半分、不安半分で周りの人と顔を見合わせている。
「価格はゼロ円! なんと、無料です!」
えぇぇぇぇぇ!
身構えていた観衆は『無料』の一言に度肝を抜かれる。
「もちろん、電話やゲームなどアプリを使えば利用料はかかりますが、手に入れるのはどなたでも無料です。会場の外に購入ブースがあるのでぜひ、帰りに一台、もらって行ってくださいね!」
うぉぉぉぉぉ!
スタジアムは興奮のるつぼと化した。新しい時代を創り出す、暮らしを一変させるガジェットが無料で手に入るのだ。一刻も早く手に入れなければならない。
「男爵、ありがとうございました! さて、本日の発表は以上になります。退場は案内係に続いて順番にお願いしますね。フォンゲートは全員に行き渡る数ご用意しております。あわてず騒がず、案内係に続いてくださーーい!」
パッパラッパー!
吹奏楽団が景気よく演奏を再開し、花火がパンパーン! と景気よく音を響かせた。
今まさにITの時代が始まったのだ。ジョブズがiPhoneを発表してみんなの暮らしが変わったように、これからこの世界の人たちもITの中で大きく発展していくに違いない。タケルは興奮に揺れる観客席を見ながら、自然と溢れ出してくる涙をそっと指でぬぐった。
お姉さんの紹介で、タケルは緊張しきったガチガチの状態でステージへと進む。
うぉぉぉぉぉ!
一気に盛り上がるスタジアム。
数万人の観客が、興奮に包まれながらタケルの一挙手一投足に熱い視線を寄せている。タケルはその熱狂ともいうべき熱いエネルギーのルツボに軽いめまいを覚えた。ちゃんと話せるだろうか? みんなを納得させられるだろうか? 震えの止まらない手、もう誰も自分を助けることはできない。このステージはタケルのための晴れ舞台、自分が最高のプレゼンを見せるしかないのだ。湧き出してくる不安に押し流されそうになりながら一歩一歩マイクのところへと歩いていく。
その時、クレアが向こう側で心配そうに手を組んで、タケルを見守っていることに気がついた。
その瞬間、なぜかタケルは『この娘が祈ってくれるから大丈夫だ』という何の根拠もない不思議な確信に包まれていくのを感じた。
『あぁ、自分は上手くやれる。わが師ジョブズのように堂々と話せばいいだけだ』
その瞬間、タケルはジョブズが乗り移ったかのように堂々とした笑顔となる。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます!」
タケルは観衆に向かって大きく手を振る。
うぉぉぉぉぉ!
観客たちもそれに応えた。
「前回、このスタジアムを熱狂にうずめたのはテトリスでした。そして今日、皆さんに、その熱狂を超えるものをご覧いただきます!」
タケルが腕を突き上げると、背景の大画面にドンとスマホ【フォンゲート】の映像が登場した。
おぉぉぉぉ……。
見た目はテトリスと同じだが、画面には王宮の風景が映っている。
「ジェラルド王子殿下、聞こえますか!?」
タケルが背景の大画面に向かって叫ぶと、画面に王子が登場した。サラサラと美しいブロンドを陽の光で煌めかせ、美しい顔には真紅の瞳が輝いていた。
「男爵、聞こえるぞ。会場の皆さん、盛り上がってるかぁ!?」
王子は大きく手を振った。
わぁぁぁぁぁ!
王宮に居る王子が自分たちのことを見て手を振っている。それは思ってもみなかったサプライズで、観客は喜んで手を振り返した。
「この端末はこうやって遠くの人と話をすることができるのです。名前は【フォンゲート】。今日、Orangeが皆さんの暮らしを一変させます!」
うぉぉぉぉぉ!
遠くの人と話をすることができる。それも相手の顔まで見える。それはこの世界の人たちにとって信じられないイノベーションだった。今まで手紙や伝言しかなかった不便なコミュニケーションが、フォンゲートならまるですぐそばにいるようにできるのだ。これが、私生活を、ビジネスを一変してしまう可能性に観衆は大きく湧いた。
「さらに! フォンゲートはお財布にもなるんです!」
画面の中で王子はデモ用の屋台へ行き、一輪の赤いバラを買い、QRコード決済で支払った。
チャリーン!
効果音が鳴り響き、店主はグッとサムアップ。
「はい、これだけで買い物ができてしまいます。この【QRコード決済】は主要な商店ではすでにご利用になれます。そして、キャンペーン期間中はなんと全て20%オフ! 何を買っても2割引きですよ? ぜひ、フォンゲートでお得な買い物を!」
うぉぉぉぉぉ!
実は硬貨での支払いは市民にとって頭の痛い問題だった。なぜなら金や銀の含有率の低い贋作コインが多数流通しており、店によっては受け取ってもらえないことがあったのだ。QRコード決済ならそんな不安なく、なおかつ2割引きとあらば使わない手はない。
「さらに! 知らない人とも友達になれるSNS、フォンゲートで買い物ができてしまうECサイトなども続々登場予定です! そして気になるお値段ですが……、いくらだと思いますか?」
ざわざわと観客席は期待半分、不安半分で周りの人と顔を見合わせている。
「価格はゼロ円! なんと、無料です!」
えぇぇぇぇぇ!
身構えていた観衆は『無料』の一言に度肝を抜かれる。
「もちろん、電話やゲームなどアプリを使えば利用料はかかりますが、手に入れるのはどなたでも無料です。会場の外に購入ブースがあるのでぜひ、帰りに一台、もらって行ってくださいね!」
うぉぉぉぉぉ!
スタジアムは興奮のるつぼと化した。新しい時代を創り出す、暮らしを一変させるガジェットが無料で手に入るのだ。一刻も早く手に入れなければならない。
「男爵、ありがとうございました! さて、本日の発表は以上になります。退場は案内係に続いて順番にお願いしますね。フォンゲートは全員に行き渡る数ご用意しております。あわてず騒がず、案内係に続いてくださーーい!」
パッパラッパー!
吹奏楽団が景気よく演奏を再開し、花火がパンパーン! と景気よく音を響かせた。
今まさにITの時代が始まったのだ。ジョブズがiPhoneを発表してみんなの暮らしが変わったように、これからこの世界の人たちもITの中で大きく発展していくに違いない。タケルは興奮に揺れる観客席を見ながら、自然と溢れ出してくる涙をそっと指でぬぐった。