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(僕は、どうしたら……)

「……彼は、凄い子なんだな」

「えっ?」

彼の言葉に、俺は静かに顔を上げる。予想外の言葉に、僕は間抜けな顔を晒してしまったらしい。ちゅう秋に「すごい顔をしているぞ」と言われ、慌てて開けていた口を閉じた。

「生きた魂を自分の保護下に置くというのは、口で言うより簡単なことでは無い。魂自体が意志を持っているから当然だな」

「……そう、なのか」

「ああ。だから、契約をする時に魂が拒否することもできるし、逆に受け入れることも出来る。基本は輪廻転生から外れるから、断られることの方が多いんだが……彼は、どうやらとても愛されているらしい」

フッと笑みを浮かべるちゅう秋に、僕は瞬きを繰り返した。ちゅう秋は続ける。

「契約を彼らに受け入れられ、互いの想いを繋ぎ、尊重し合って生きている。……そう簡単に出来ることじゃあない」

彼の友人を褒め称える言葉に、僕は徐々に気持ちが晴れていくのを感じる。

(やっぱり、君は天才だったんだな)

マサキくんの顔を思い出し、僕はクスリと笑う。……マサキくんは、もしかしたら一人と二羽の小さな秘密を守りたかっただけなのかもしれない。だから、詳しいことは言わなかった。きっとそうだ。優しくて素直じゃない、彼のことだから。

(今度会った時にでも聞いてみようか)

驚いた顔をするであろう彼に笑いながら、僕は静かに紙とペンを手に取る。「何をするんだい?」と問いかけてくるちゅう秋に「返事を書くんだよ」と返す。

「マサキくん、武者修行の旅に出たみたいだよ」

「そうか。それは成長が楽しみだな」

「だろう?」

ちゅう秋の言葉に、僕は頷く。だってそうだろう。

(彼は、僕の友人なのだから)

僕は色の濃い、淀みのない茶を啜る。

時折悩みながらもペンを進め、僕は一通の手紙を書き上げた。奥さんから貰った封筒に封をした時にはもう、夕焼けが空を埋めつくしていた。最後に宛名に『マサキくんへ』と書き上げ、僕はペンを置く。──さて。

「ちゅう秋」

「なんだ?」

「これ、どうやって届ければいいと思う?」

「……君のその計画性の無さは賞賛に値するな」

呆れた声で言うちゅう秋に、僕は「やめろ。褒めるな」と告げれば「安心しろ。褒めていない」と返される。

僕は手紙の入った封筒を見つめる。しばらくして、ちゅう秋が大きくため息を吐くと、指笛を吹いた。すぐさま駆け寄ってくるチワワ。それを横目に、僕は近くの木に停まった二つの光りを見た。……見られている。