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「そうだよな。つーか狙ってやるならもっと強力な呪いを掛けたほうが効率がいいだろうし」

「……マサキくんって、意外と容赦ないよね」

平然と恐ろしいことを言ってのけるマサキくんに、僕は苦笑いをする。

機会があるなら容赦などしない。出来ることは全力でする。……そういうところが、彼と同じ陰陽師を名乗っている親友と似ているように見える。

「ふふふっ」

聞こえる笑い声に、僕はネザサを見る。マサキくんとの会話が面白かったのだろうか。ネザサが楽しそうにくすくすと笑みを浮かべていた。その顔はさっきまでの沈んだ表情とは違い、年相応の柔らかい笑みで。マサキくんはそれに満足げに微笑んでいる。

(……彼女は、もしかしたらマサキくんと出会ったことで救われたのかもしれないな)

僕はそう思いながら、お茶を口にする。少し温くなったお茶は熱を持った体を冷やしてくれるのにちょうどよかった。ネザサはくすくすと笑うと、じっと僕を見つめた。その視線は、何かを覚悟する視線をしていた。

「だからもし、『華絵 彼岸花』を大切にしてくれる人がいるなら、……私はその人に託したい」

真っすぐ見つめてくる彼女に、僕は心の奥が熱くなっていくのを感じる。まるで彼女の熱意が流れ込んできているかのようだった。

(よかった)

そう安心していると、マサキくんがぷはっとお茶を飲み干すと、近くにあった煎餅に手を伸ばした。

「でもあの絵、妹尾さんが管理していることになってるんだろう? 勝手に持っていくのは難しいんじゃないか?」

「えっ、そうなの?」

バリッと勢いよく煎餅を歯で割るマサキくん。突然の空気を読まない彼の行動に、僕は肩を揺らして目を見開いた。しかし、ネザサはまるで気にした様子はない。

マサキくんは煎餅をもう一つ手に取ると、宙を見つめ再び唸る。

「うーん……ネザサ本人が言ってどうなるか、ってところだな」

「そんな……!」

「大人たちは面倒なこと大好きだからなぁ」

ネザサとマサキくんのやり取りを、僕は静かに聞いていた。若い二人の言葉は、大人としては耳が痛い。

(確かに大人は面倒事が好きだと、僕も思うよ)

権利然り、管理然り。何でもかんでも理由を付けて正当化したがるのが大人という生き物だ。しかし、それをしなければいけない理由も、世間を生きれば生きるほどわかってしまう。……それはきっと、若い二人には生き辛く映るのだろうけど。

「ていうか、マサキくんも僕に持って行ってくれって言ってなかったかい?」