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「おお……! もう一羽いたのか!」

「はい。でもこの子はかなり力が弱くて、常時一緒にいることは出来ないんですけどね」

「僕の大切な家族です」と笑うマサキくん。その表情はまるで愛おしい子供を見るかのようだった。

(ちゅう秋が式神を自由に扱える人間は能力が高いんだって言ってたな)

やはりマサキくんは紛れもない天才なのだろう。彼は楽しそうに自分の周りを飛び回る鳥たちを見上げる。僕が名前を聞けば「ちうとガーです」と嬉しそうに答えてくれた。

「黒っぽい紺色の方がちうで、白い方がガーです。可愛いでしょう?」

「え、あ、う、うん」

「二羽とも、昔僕が飼っていた九官鳥なんです」

「そ、そうなんだ」

マサキくんの指先に合せて、僕は話を聞きながら視線を向ける。楽しそうに話している彼を横目に、僕は内心冷や汗をかいていた。

(ぜ、全然わからん……!)

僕にとっては両方とも同じくらい白く発光しているし、サイズも見た目も同じように見えているのだ。見分けなどつくわけがない。かろうじて片方の鳥の光が若干弱弱しく見えるくらいだろうか。……気のせいかもしれないが。

「ちうはお調子者で悪戯好きなんですけどヴァイオリンの音が好きなんです。ガーは体が弱いくせに食いしん坊で――」

「へ、へぇ」

「でも二人ともすっごく仲が良かったんですよ。晴れた日なんか――」

どんどんヒートアップしていくマサキくんの口は止まらない。九官鳥の蘊蓄まで話し出した彼に、僕は頬を引き攣らせてしまった。

(ど、どうにか話を逸らさないと)

彼が話初めると止まらないことは何となく察していた。このままでは話は明後日の方へと向かってしまうだろう。妻もいることだし、時間は深夜にも近い時間。あまり長い間話を聞いている余裕はない。

(ごめんね、マサキくん)

また今度ちゃんと聞いてあげるから、と頭の中で謝罪をしながら、僕は話を変えることにした。

「そ、そういえば、彼女はどうしたんだ?」

「ん? ああ、ネザサの事ですか?」

「そうそう。ネザサちゃん」

「君の保護対象なんだろう?」と聞けば、「そうですね」とマサキくんは頷く。……上手く切り替わった話に、僕はホッと胸を撫で下ろした。――しかし、安堵の時間も束の間。

告げられた言葉に、僕は素っ頓狂な声を出してしまった。

「彼女は妹尾さんの家にいますよ」

「えっ? 妹尾さん宅に?」

「はい」

マサキくんの言葉に、心底驚く。