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「そうだね。そういうことなら僕は構わないけど……君はどう思う?」

「私も、問題ないと思いますよ」

「それじゃあ、お願うしようかな」

妻の言葉に僕は頷き、マサキくんたちに声をかけた。すると2人は顔を合わせ、ニコリと笑う。

「お任せ下さい!」

「天才陰陽師であるマサキが完璧にご案内いたしましょう!」

「ふふっ。よろしく頼むよ」

胸を張る二人に、笑みがこぼれる。少年少女らしい言動に微笑ましい気持ちが込み上げてくる。さっきまでの大人顔負けの態度より、断然こちらの方がいい。

僕達はマサキたちに案内され、祭りを見ることになった。そう遠くない場所でやっていたらしく、道を三本抜けたところで太鼓と笛の音はどんどん祭囃子として、僕達の耳にも届いてくる。

(凄いな……)

僕の地元でも桜まつりはやっているものの、残念なことにほとんど地元の人間が見に来るくらいでしかない。昔はもう少し賑わっていたのだそうだが、大きな喧嘩に一般人が巻き込まれた上、大事になったのがきっかけで祭りの規模を小さくせざるを得なかったらしい。元々、近隣住民からは苦情が入っていたこともあって、今では桜並木の一部──公園の前だけで数店舗の出店が出ているくらいだ。寂しいものである。

「この辺りからですよ」

「人がすごいので気をつけてくださいね」

「あ、ああ」

「分かりました」

二人の言葉に、僕達は頷く。そして角を曲がった瞬間──まるで別世界のようだった。

「お、おお……!」

「す、すごい……!」

見渡す限りの桜、桜、桜。まるで桜の海が広がっているのではないかと思ってしまうほどの迫力に、僕は唖然とするしか無かった。

(これはもう、世界が違うとしか言いようがないな……!)

桜の海を人々が掻き分けて歩いているかのような光景に目を奪われていれば、マサキくんの手が眼前を通った。ひらひらと振られる手のひらにハッとして彼へと視線を向ければ、したり顔をする彼と目が合った。

「すごいでしょう?」

「ああ……びっくりしたよ。すごいね」

「ここ一体は自治会が管理してるから、手も込んでるんですよ! これぞ、日本の雅! 世界に誇る日本の財産です!」

「確かに。これは日本の財産と言ってもいい光景だ。本当に素晴らしい」

「ふふん」

上機嫌に鼻を鳴らし、胸を張るマサキに僕は再び桜を見上げる。

大きな道路を挟んで両側に二十本……否、三十本近くはあるだろうか。それほどまでの量の木が、それぞれ満開にも近い桜を咲かせている光景は圧巻と言っても過言では無い。