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「はい、もしもしー! 天才陰陽師、マサキへお電話いただきましてありがとうございまーっす!」

「……相変わらずだなぁ、お前は」

「あ? なーんだ。会長さんじゃないですかぁー」

マサキは受話器の向こうから聞こえる声に、明らかに落胆した様子を見せた。カップラーメンを引き寄せ、マサキは揃っていない箸で行儀悪く啜る。

「なんだとはなんだ。せっかく人が仕事の依頼をしてやろうと連絡したというのに」

「え!? 仕事くれるんすか!?」

「変わり身が早すぎるだろう。あと飯を食いながら話すんじゃない」

「んー、別にいいじゃないですかぁ。んで、何の御用ですー?」

「……はあ。お前は相変わらず……ああもう、いい。話が進まん」

自治会の会長は呆れた声で吐き捨てると「とにかく来てくれ」と口にした。マサキは麺を啜りながら首を傾げる。

「どういうことです?」

「口頭では言いづらいのだ。いいから来てくれ。今日中だ今日中」

「はあ? 今ぁ?」

「いいか、出来るだけ早く来るんだ。いいな」

そう言って会長は電話を切った。無情にも途切れた通信にマサキは苦悶の顔を浮かべる。

「身勝手にもほどがあるだろう、なあ、ちう」

「ちう~っ!」

「そう思うだろう。うん、うん」

「ちう、ちう」

「ん? ああ、わかっているよ。まずは飯を食ったらな」

「ちうちう!」

「ハイハイ。ったく、お前は食いしん坊なんだからなぁ」

肩に乗って頬を突っつくちうの嘴に、マサキはカッターナイフを手に取った。自身で指先を切り、ちうの口元へ持っていけばちうは嬉しそうに啄む。式神であるちうにとってはそこらのネズミよりも、使役する主の血を食べる方が効率的だ。

「よっし! 行くぞー、ちう!」

「ちーうっ!」

腹いっぱいになった二人は再び古家を出ると、かの会長がいる場所へと向かった。



「はー。やっぱ寂れてんなぁ~。なあ、ちう」

「ちうちう」

会長がいる場所は、マサキの住んでいる場所からそう遠くはない。

かつては都会を囲むベッドタウンの一つだったこの町は、今では若者の活気もなくなり、老人の溢れる場所となっていた。若者が好きそうなカフェや服屋は次々に潰れ、老人ホームや介護施設が建設されていく。洋菓子も和菓子中心の店となり、その数もどんどん少なくなっていく。賑わっていた駅前も、今ではシャッター街だ。目ぼしいものがあると言えば、街の中央を流れる川を中心に咲き誇る桜道だけである。

そんな寂れた街を闊歩しながら、マサキはぶらぶらと目的地へと向かっていた。