プロローグはどうやって書こう。
早朝、髙橋紗絵はスマホを片手にそんなことを考えていた。
どちらかといえば、何を書こう。と言ったところだろうか。
紗絵は小学校中学年くらいの頃から、読書が好きで好きでたまらなかった。
きっかけは、当時ドラマ化され人気があった推理小説だった。
ドラマを観てから原作を読み始め、本の世界観にすっぽりはまってしまったのだ。
そこからというと、中学生向けの外国の物語や、最後に思わず泣いてしまう恋愛青春小説、主人公が何かきっかけを得て成長する現代ファンタジー……。家族に呆れられるくらい本を買い、本を読み、本が好きだった。
いつしか、紗絵はオリジナルの小説を書くようになっていた。
自ら案を出し、自ら打ち込み、自ら勉強をする、完全独学方式だ。
同じクラスの誰しもが嫌う作文がスラスラと書けるのが気持ちよかった。
そもそも紗絵は、運動も勉強も苦手であり嫌いだ。
それは大学生になった今でも変わらない。
だから“小説”は、運命の赤い糸で結ばれた何かなのかもしれない。
「あ、紗絵」
カウンターで頬杖をついていた紗絵の耳に飛び込んできた声は、青年の声だった。
「おはよう。大和」
「ん。相変わらず朝早いね」
「そっちが夜行性なだけでしょ」
眠そうに目を擦る彼は、紗絵の幼馴染、東雲大和。
紗絵が朝方人間なのに対し、大和は夜型人間だ。早起きは至難の業と言っても過言ではないほどに朝が苦手らしい。
「ほら、そっちも仕込みがあるんだから、寝ぼけてないで準備して」
「はぁーい」
大和はまるで子供のように、あくびが混ざった声で返事をした。
紗絵はクリーム色のエプロンを身につけ、手首につけたヘアゴムで髪を結んだ。
日中のマスターは紗絵。
優しくも元気が出る食べ物を作るのが紗絵の仕事。
外に出ると、3色の“水色”が広がる。
海の透き通る水色、空の優しい水色、そして、建物の明るい水色。
今日は、どんな青が見られるだろう。
「『ソーダフロート』開店です」
早朝、髙橋紗絵はスマホを片手にそんなことを考えていた。
どちらかといえば、何を書こう。と言ったところだろうか。
紗絵は小学校中学年くらいの頃から、読書が好きで好きでたまらなかった。
きっかけは、当時ドラマ化され人気があった推理小説だった。
ドラマを観てから原作を読み始め、本の世界観にすっぽりはまってしまったのだ。
そこからというと、中学生向けの外国の物語や、最後に思わず泣いてしまう恋愛青春小説、主人公が何かきっかけを得て成長する現代ファンタジー……。家族に呆れられるくらい本を買い、本を読み、本が好きだった。
いつしか、紗絵はオリジナルの小説を書くようになっていた。
自ら案を出し、自ら打ち込み、自ら勉強をする、完全独学方式だ。
同じクラスの誰しもが嫌う作文がスラスラと書けるのが気持ちよかった。
そもそも紗絵は、運動も勉強も苦手であり嫌いだ。
それは大学生になった今でも変わらない。
だから“小説”は、運命の赤い糸で結ばれた何かなのかもしれない。
「あ、紗絵」
カウンターで頬杖をついていた紗絵の耳に飛び込んできた声は、青年の声だった。
「おはよう。大和」
「ん。相変わらず朝早いね」
「そっちが夜行性なだけでしょ」
眠そうに目を擦る彼は、紗絵の幼馴染、東雲大和。
紗絵が朝方人間なのに対し、大和は夜型人間だ。早起きは至難の業と言っても過言ではないほどに朝が苦手らしい。
「ほら、そっちも仕込みがあるんだから、寝ぼけてないで準備して」
「はぁーい」
大和はまるで子供のように、あくびが混ざった声で返事をした。
紗絵はクリーム色のエプロンを身につけ、手首につけたヘアゴムで髪を結んだ。
日中のマスターは紗絵。
優しくも元気が出る食べ物を作るのが紗絵の仕事。
外に出ると、3色の“水色”が広がる。
海の透き通る水色、空の優しい水色、そして、建物の明るい水色。
今日は、どんな青が見られるだろう。
「『ソーダフロート』開店です」