あたしは青木の夢をよく見る。この日も夢の中で、青木は明るい笑顔を見せていた。
ああ、青木だ……。
見ている方も嬉しくさせるような、眩しい輝く笑顔。胸の辺りがふんわり暖かくなる。
青木のいない日常より青木のいる夢の世界の方が、あたしにとっては幸せだった。
ほら、青木は生きている。笑っている。
「――」
? 何だろう?
「――」
何か聞こえる。人の声?
「たて……の」
誰かがあたしを呼んでる?
「立野!」
え? この声……!
「立野! あのー、立野蒼さん! 名前違うのか?」
青木の声だ……! 間違うわけない!
「はあ……。立野ぉ」
喜びに胸が震えた。
青木、やっぱり生きてたんだ!
きっとすべて悪い夢だったのだ。
「青木……よかったよ、生きてて……」
夢現で瞼が重くて開けられなかったけれど、あたしは声だけを出した。
これでまた青木の存在する日常が戻ってくる。目を覚ませば悪夢は霧散する。
開かない目から、熱いものが溢れてきた。
「立野、起きてくれ。それは違う。俺は死んだ。死んだんだ」
耳元で青木の言葉がはっきりと響いた。
なんで青木がそんなこと言うの?
これは現実? それともまだ夢の中?
夢だとすれば嫌な夢だ。本人に断言される夢なんて。
目を覚まさないと。夢でくらい幸せでいたいから。
ベッドの上で目をこすり、うっすら目を開けるとぼんやりと人影が見えた。
人影……? 誰?! 泥棒?!
一気に目が覚めて、弾けるようにベッドから身を起こした。
「?!」
あたしは、思わず大声をあげそうになった。
な、なんで?! どうなってるの?!
「しー。大声出さないでくれ」
唇に人差し指を当てた人影は、Tシャツにデニム姿の、青木だった。
状況が把握できない。
あたしは頬をつねる。普通に痛い。あたし起きてる。
あたしは目の前の青木を呆然として見つめた。
青木だ。青木がいる。あたしの部屋に。
どうやって入ったの? ううん、そんなのどうでもいい。
「本物? 青木なの? やっぱり生きてたんだ!」
声に喜びがにじんでしまう。
「ああ。正真正銘青木だ。でも、残念ながら生きてない」
ここにいるのに? 生きてなくてここにいる……?
そんなまさか。じゃあ、この青木は、なに?
あたしは混乱しながらも、無理矢理青木の足元に視線を移動させた。幽霊であれば足がないというじゃないか。
だが、足はあった。ただそれは地面についてはいなかった。
う、浮いてる!!
あたしはめまいを覚えてベッドに倒れ込んだ。
青木がそのときあたしの背中を支えようとしたけれどすり抜けただけだった。
「大丈夫か?! 立野!」
青木があたしの顔を覗き込んでくる。
近い!
「だ、大丈夫だから!」
あたしは答えて起き上がり、青木と少し距離を取るように後ろにさがった。
心音が青木に聞こえてないか不安になる。
ええと。ダメだ。なんだかいろいろキャパオーバーだ。
「あ、青木、今すり抜けたよね」
あたしは空気を変えるために言った。
青木は頭をかきながら、困った笑みを浮かべた。
「驚くよな。まあ、予想通り、幽霊ってやつみたいなんだよね、俺」
幽霊を見るなんて初めての体験だ。
でも幽霊でもなんでもいい。青木がいる。それだけでこんなにもドキドキするし、嬉しい。
でも、なんだろう。なにか忘れているような。
青木は宙にあぐらをかくようにして、あたしを見ている。
見ている?
かあっと頬が熱くなった。
待って。ここはあたしの部屋。しかもあたし寝起き!
あたしずっと青木に寝顔を見られてたの? ……なんだか恥ずかしい!
「あ、青木! あた、あたし、パジャマなんだけど」
「ああ、それパジャマなの? Tシャツに短パン」
「い、一応」
「Tシャツに短パンと言えば、立野、毎日ハイジャンの練習してたよな〜、確か」
あたしを思ったより知っている青木に驚いた。でもその反応はなにか違うような……。
「あ、あれは体操着で……。そういうことじゃなくてさ。青木。今は夜で、ここは一応、女子の部屋なんだけど」
言って自分でも驚いた。
女子の部屋? あたしがそれを言うの?
それでも、青木があたしの部屋に居ると、なんだかくすぐったいような恥ずかしさで変な感じがするのだ。
青木はというと、小さく「あっ」と言い、顔を赤らめた。
「わ、悪い! でも、その、他意は全くなくて、気が付いたらここにいたんだ。ごめん!」
青木はなぜここに現れたのか自分でも分からないようだった。ただただうろたえていた。
そうだよね。自意識過剰な自分が恥ずかしくなって、あたしはベッドから出た。
「ちょっと顔を洗ってくる」
ああ、青木だ……。
見ている方も嬉しくさせるような、眩しい輝く笑顔。胸の辺りがふんわり暖かくなる。
青木のいない日常より青木のいる夢の世界の方が、あたしにとっては幸せだった。
ほら、青木は生きている。笑っている。
「――」
? 何だろう?
「――」
何か聞こえる。人の声?
「たて……の」
誰かがあたしを呼んでる?
「立野!」
え? この声……!
「立野! あのー、立野蒼さん! 名前違うのか?」
青木の声だ……! 間違うわけない!
「はあ……。立野ぉ」
喜びに胸が震えた。
青木、やっぱり生きてたんだ!
きっとすべて悪い夢だったのだ。
「青木……よかったよ、生きてて……」
夢現で瞼が重くて開けられなかったけれど、あたしは声だけを出した。
これでまた青木の存在する日常が戻ってくる。目を覚ませば悪夢は霧散する。
開かない目から、熱いものが溢れてきた。
「立野、起きてくれ。それは違う。俺は死んだ。死んだんだ」
耳元で青木の言葉がはっきりと響いた。
なんで青木がそんなこと言うの?
これは現実? それともまだ夢の中?
夢だとすれば嫌な夢だ。本人に断言される夢なんて。
目を覚まさないと。夢でくらい幸せでいたいから。
ベッドの上で目をこすり、うっすら目を開けるとぼんやりと人影が見えた。
人影……? 誰?! 泥棒?!
一気に目が覚めて、弾けるようにベッドから身を起こした。
「?!」
あたしは、思わず大声をあげそうになった。
な、なんで?! どうなってるの?!
「しー。大声出さないでくれ」
唇に人差し指を当てた人影は、Tシャツにデニム姿の、青木だった。
状況が把握できない。
あたしは頬をつねる。普通に痛い。あたし起きてる。
あたしは目の前の青木を呆然として見つめた。
青木だ。青木がいる。あたしの部屋に。
どうやって入ったの? ううん、そんなのどうでもいい。
「本物? 青木なの? やっぱり生きてたんだ!」
声に喜びがにじんでしまう。
「ああ。正真正銘青木だ。でも、残念ながら生きてない」
ここにいるのに? 生きてなくてここにいる……?
そんなまさか。じゃあ、この青木は、なに?
あたしは混乱しながらも、無理矢理青木の足元に視線を移動させた。幽霊であれば足がないというじゃないか。
だが、足はあった。ただそれは地面についてはいなかった。
う、浮いてる!!
あたしはめまいを覚えてベッドに倒れ込んだ。
青木がそのときあたしの背中を支えようとしたけれどすり抜けただけだった。
「大丈夫か?! 立野!」
青木があたしの顔を覗き込んでくる。
近い!
「だ、大丈夫だから!」
あたしは答えて起き上がり、青木と少し距離を取るように後ろにさがった。
心音が青木に聞こえてないか不安になる。
ええと。ダメだ。なんだかいろいろキャパオーバーだ。
「あ、青木、今すり抜けたよね」
あたしは空気を変えるために言った。
青木は頭をかきながら、困った笑みを浮かべた。
「驚くよな。まあ、予想通り、幽霊ってやつみたいなんだよね、俺」
幽霊を見るなんて初めての体験だ。
でも幽霊でもなんでもいい。青木がいる。それだけでこんなにもドキドキするし、嬉しい。
でも、なんだろう。なにか忘れているような。
青木は宙にあぐらをかくようにして、あたしを見ている。
見ている?
かあっと頬が熱くなった。
待って。ここはあたしの部屋。しかもあたし寝起き!
あたしずっと青木に寝顔を見られてたの? ……なんだか恥ずかしい!
「あ、青木! あた、あたし、パジャマなんだけど」
「ああ、それパジャマなの? Tシャツに短パン」
「い、一応」
「Tシャツに短パンと言えば、立野、毎日ハイジャンの練習してたよな〜、確か」
あたしを思ったより知っている青木に驚いた。でもその反応はなにか違うような……。
「あ、あれは体操着で……。そういうことじゃなくてさ。青木。今は夜で、ここは一応、女子の部屋なんだけど」
言って自分でも驚いた。
女子の部屋? あたしがそれを言うの?
それでも、青木があたしの部屋に居ると、なんだかくすぐったいような恥ずかしさで変な感じがするのだ。
青木はというと、小さく「あっ」と言い、顔を赤らめた。
「わ、悪い! でも、その、他意は全くなくて、気が付いたらここにいたんだ。ごめん!」
青木はなぜここに現れたのか自分でも分からないようだった。ただただうろたえていた。
そうだよね。自意識過剰な自分が恥ずかしくなって、あたしはベッドから出た。
「ちょっと顔を洗ってくる」