立野の眉間にしわが寄る。女子のグループの横を通り過ぎたときだった。同時にふわっといい香りがした。
何の匂いだ? シャンプーの香りなのか?
甘い花のような人工的な匂いが、その女子たちからはした。
今まで気に留めたことはなかった。女子からはこんな香りがしていたのか?
なんだか不思議な感じだ。
立野と他の女子たちの違い。
俺はなんとなく分かってきた気がする。いわゆる女っぽさというものが、あるかないかなんだろうか。
女子は男子とかなり異なることが分かってきた。まあ確かに、よく手入れされた髪が、風に揺れていい香りがするなんて男子にはないよな、と俺は一人納得する。
立野は自分はどこにも属していないと言っていた。
でも立野は性別上は女だ。今はLGBTの問題があるから断定していいのかは分からないけれど、男の俺とはやっぱり違うと思う。
立野からは不思議な匂いはしないし、唇もピンクに光ってないし、日に焼け放題だし、髪もベリーショートで、どちらかというと見かけは男子に近い。(ごめん、立野)
時々、立野は、男子の輪を羨ましげに見ているけれど、そこに入ろうとはしない。
立野はあえて男女どちらにも関わらないようにしているようにも見える。でも、そうすることで立野が、楽になるのか、苦しいままなのか。そこまでは俺には分からない。ただ、立野は生きづらそうだなと感じる。
性別について今までこんなに考えたことはなかったな。
そういえば自分の周りに集まっていた男子たちも、よく「誰々が可愛い」とか「最近誰々が色っぽくなった」だのの話をしていたのを思い出した。
俺は「誰々」が誰か分からないときが多く、ただ、そういう話をするときの幸せそうな友人の顔を見るのが好きだった。そして、人を好きになるとはどんなことなんだろうと思った。
自分は幼かったのだろうか。
毎日友達たちと一緒にいるだけで楽しかった。
休み時間にサッカーをしたり、自転車で遠くまででかけたり。
毎日いろんなことがあって、ただただ楽しかった気がする。もちろん部活できついときや、試験前の徹夜、親父の転職による転校など大変なこともあった。けれど、それさえもその時しか経験できないことと思うとやってこれた。実際、やり終えた後はつらかったこともいい思い出になったものだ。
立野はどうなんだろう。
ハイジャンをしてるときの生き生きした立野と、その他のときの無愛想な立野。
前者は解ってきた。でも後者は?
立野はなにを思っているんだろう? どうしたいんだろう? どうなりたいんだろう?
考えるたびに、立野への興味は増していく。
立野には部活のときのように伸び伸びと笑ってほしい。立野の笑顔は可愛いんだから。そう思うようになった。
きっと他の誰もが、一人ひとりいろんな悩みを抱えているのだろうけど。
こんな風に一日中他人と一緒にいることは、普通ないもんな。
立野に対する興味が湧くことは、当然のように思えた。
けれど俺はなんで立野のところに現れたのだろう……。
幽霊になって常に頭を占める疑問。まだ俺には分からない。
何の匂いだ? シャンプーの香りなのか?
甘い花のような人工的な匂いが、その女子たちからはした。
今まで気に留めたことはなかった。女子からはこんな香りがしていたのか?
なんだか不思議な感じだ。
立野と他の女子たちの違い。
俺はなんとなく分かってきた気がする。いわゆる女っぽさというものが、あるかないかなんだろうか。
女子は男子とかなり異なることが分かってきた。まあ確かに、よく手入れされた髪が、風に揺れていい香りがするなんて男子にはないよな、と俺は一人納得する。
立野は自分はどこにも属していないと言っていた。
でも立野は性別上は女だ。今はLGBTの問題があるから断定していいのかは分からないけれど、男の俺とはやっぱり違うと思う。
立野からは不思議な匂いはしないし、唇もピンクに光ってないし、日に焼け放題だし、髪もベリーショートで、どちらかというと見かけは男子に近い。(ごめん、立野)
時々、立野は、男子の輪を羨ましげに見ているけれど、そこに入ろうとはしない。
立野はあえて男女どちらにも関わらないようにしているようにも見える。でも、そうすることで立野が、楽になるのか、苦しいままなのか。そこまでは俺には分からない。ただ、立野は生きづらそうだなと感じる。
性別について今までこんなに考えたことはなかったな。
そういえば自分の周りに集まっていた男子たちも、よく「誰々が可愛い」とか「最近誰々が色っぽくなった」だのの話をしていたのを思い出した。
俺は「誰々」が誰か分からないときが多く、ただ、そういう話をするときの幸せそうな友人の顔を見るのが好きだった。そして、人を好きになるとはどんなことなんだろうと思った。
自分は幼かったのだろうか。
毎日友達たちと一緒にいるだけで楽しかった。
休み時間にサッカーをしたり、自転車で遠くまででかけたり。
毎日いろんなことがあって、ただただ楽しかった気がする。もちろん部活できついときや、試験前の徹夜、親父の転職による転校など大変なこともあった。けれど、それさえもその時しか経験できないことと思うとやってこれた。実際、やり終えた後はつらかったこともいい思い出になったものだ。
立野はどうなんだろう。
ハイジャンをしてるときの生き生きした立野と、その他のときの無愛想な立野。
前者は解ってきた。でも後者は?
立野はなにを思っているんだろう? どうしたいんだろう? どうなりたいんだろう?
考えるたびに、立野への興味は増していく。
立野には部活のときのように伸び伸びと笑ってほしい。立野の笑顔は可愛いんだから。そう思うようになった。
きっと他の誰もが、一人ひとりいろんな悩みを抱えているのだろうけど。
こんな風に一日中他人と一緒にいることは、普通ないもんな。
立野に対する興味が湧くことは、当然のように思えた。
けれど俺はなんで立野のところに現れたのだろう……。
幽霊になって常に頭を占める疑問。まだ俺には分からない。