それに気付いた周が腕を掴んでくる。どこか冷え切った瞳が、あたしに向けられた。
「本当に嘘、ついたんだね。お父さんから話なんてないんでしょ」
「そうでもしないと家にこねえだろ。ひとの親にいつまでも付いて回ってんだから」
「友梨も一緒に話をさせてよ。あたしたち、いつも三人で一緒なんでしょ?」
強引に引っ張られて玄関に通されると、背後で扉が閉まる音が響く。まるで恐ろしい化け物の巣穴に飛び込んでしまったような気分だった。
ドッドッと心臓の音がうるさい。
最近は落ち着いていたし、鏡を見ることだって減った。花が成長していく姿に心が弾んで、毎日が目まぐるしくて…。
目の前にいる周は怖い顔をしている。
周は、むかしとは違う。あたしの知ってる周じゃない。もうどこにもいないのだとあたしに突き付けてくる。
「これ、覚えてるか」