久しぶりに訪れた周の家。いままでに何度もお邪魔している。
 背後を振り返ると友梨はあたしの傘を差しながら、じっと見つめていた。

 インターホンを鳴らすと、おばあちゃんの家よりも軽い音が流れた。最近の家は部屋にいても誰が訊ねにきたかわかるらしい。
 洋風で立派な周の家を見上げながら、隣に視線を向けると同じような家が立ち並んでいる。周の家の二階の窓から行き来できそうなほど、隣の家との距離が近い。

 あの隣の家が友梨の家だ。小さい頃はよく遊びに行ったし、お泊りもした。
 友梨のお母さんがホットプレートでパンケーキを焼いてくれたこともある。
 でも、中学生になってから行かなくなった。周が野球部に入部して、友梨がマネージャーになったから。下校時間が合わなくなって、クラスが離れると、周が行きだけでも一緒に行こうと提案してくれたのだ。

 重たそうな扉が開いて、周が顔を見せた。
 手を振ると、周は目じりを緩ませながら近づいてきて門を開ける。制服姿じゃなくて、シャツとジーンズの姿は久しぶりに見た。

「周静、よかった! 話がしたいんだけど」

 友梨の縋るような声を無視した周は、あたしをじっと見つめた。

「…一花だけ上がってけよ」

 周のほの暗い瞳を見つめていると、あたしはいつの間にか後ずさっていた。