小雨が降る中、あたしは塩尾瀬に自分の持ってきた傘を傾けながら、いつもの帰り道を歩いていた。

「傘ずっと借りててごめんね。あしたに返すから」
「返せるときでいい」

 付き合っていないのに、塩尾瀬との距離はどんどん近くなっていく。

「親の会議って珍しいよな。あの学校ではないと思ってた」

 胸がドキドキとしてしまう。そのドキドキの半分は塩尾瀬との距離に対してだ。
 残りの半分は親の会議についてだった。もう半分とは真逆で背筋が凍りそうなドキドキを感じてる。確信はないけど、周のお父さんがいじめについて話してるんじゃないかって疑っていたから。

「あたしの親は参加しないんだ。ほら、仕事で忙しいしおばあちゃんは寝込んでて…」
「病気か?」
「そう…、本当は入院しなくちゃいけないんだけど」

 あたしの我儘で、またおばあちゃんを苦しめてる。
 本当はお母さんについていくべきだとわかっているけど、塩尾瀬の傍にいたくて言えないままだ。

 塩尾瀬とカーブミラーがある左右に分かれた道のところで別れた。

 おばあちゃんの家に帰ると、お母さんは仕事から帰っていないようで静まり返った空気があたしを出迎えた。
 しばらくおばあちゃんの様子を見たり、部屋で宿題と向き合っていると、チャイムが鳴り響いた。