一番初めに撮った思い出の写真だから、と言って印刷したけれど、何の代わり映えもない写真だと思っていた。

「不満か? 受賞者の言葉に従うけど」
「いや…なんで初めの写真なのかなって」
「思い出込みっていうか」

 途中で言葉を止めた塩尾瀬が門のほうに視線を向けた。あたしも同じように視線を向けて、体が強張る。うつむいたまま大股で近づいてきたのは、もう会うことのないはずの周だった。

「…また文句か? 野球部は暇なのかよ」
「試合、近いのにね」

 塩尾瀬に合わせて言ってみたけど、試合どころではないはずだ。
 きのうの夜遅くまで近所のひとが家に押しかけてきて、みんな口々に「自分の子どもが申し訳なかった」と騒ぎ立ててきたのだから。
 いま思い返せばあれは野球部に所属する息子の親と、クラスの子の母親だったんだろう。後者は何回か家にお邪魔させてもらったときに見ているので、懐かしい顔ぶれだった。

「一花、帰ったら家に寄ってくれ。親父が話したいことあるって」
「…嘘、だよね。周のお父さんは近づかないように言いつけておくって言ってたけど…」

 あたしの言葉に足を止めたけど、何も言わないまま立ち去ってしまった周を見送る。

「そんなこと言われたのか?」
「うん…でも周のお父さんならすぐに解決してくれるはずだから」

 珍しいことにいつも周が肩から引っ掛けているスポーツバックがなかった。忘れてしまったんだろうかと首を傾げつつも、塩尾瀬の指示が飛んだのでカメラを構えた。