結局一睡もできないまま、塩尾瀬の待ってる裏庭に向かうと、金の光を見つけた。
どんな暗闇でも輝いていそうな金は、熱い視線を花壇に向けてる。
「おはよ」
「はよ、葉が増えたぜ」
「ほんと?」
さっそく持ってきたカメラに百日草の成長を収めると、小さく息を吐いた。
「土みてーな顔色だけど、またいじめられたのか」
「笑えないジョークだよ…。これもフィルムカメラで撮っていい?」
「いいよ」
土みたいな顔色と言われて喜ぶ女の子はいないだろう。
あたしはレトロで素敵なフィルムカメラをカバンから取り出した。今度はフラッシュを使ってみると予想以上に眩しかった。
「それより、写真どうしよう。もうコンテストの応募来週だよね」
努めて明るく振る舞うと塩尾瀬はじょうろを傍に置きながら、小さく頷いた。
「俺は一番初めに浅咲が撮った、百日草の芽の写真でいいと思う」
「え、芽の?」
写真のデータがいっぱいになってしまったので、いくつか厳選して印刷し、残りは消してしまったのだ。