下駄箱に靴を突っ込むと、目ざとい友梨が「こら、揃えないと」と叱るように言った。
 面倒だなあ、と思いながらそのまま上履きを履く。

「私が美化委員会で揃えなきゃいけないでしょ。ほら、さっさと綺麗に揃えて」
「やだよ、面倒くさい」
「なんで一花はそんなこともできないの?」

 そんなことも、なんて言い方はどうだろう。
 友梨の「正義感ぶってる」姿がいつも嫌いだ。
 面倒だと言って何が悪いの?
 靴くらい綺麗に揃えなくてもまた履くんだからいいじゃん。

「ったく、ケンカしねーの!」

 先に上履きを履き終えていた周がさっさとあたしの靴を揃えた。
 友梨がそれを見て、細い眉をつり上げる。

「あ、ダメじゃない。一花に揃えさせないとだらしない子になるよ」
「次からは揃えろよ、一花」
「特別扱いやめてよ」

 先を歩く周の隣に並んだ友梨はむくれた表情を浮かべる。
 そんなふたりを追いかけようとして、職員室前を通ったときに足が止まった。
 真っ白な壁に飾られた卒業生の写真、賞状を持つ知らない先輩の写真。
 それらに紛れて、あたしが写った写真を見つけると、舌を出してしまいそうになった。

「…早く捨ててほしいな」

 賞状を持ったあたしの写真の下に飾られた、別の写真を見つめながら呟いた。