いじめという重たい言葉を首にぶら下げたあたしは、いつの間にか近所のひとが様子を見に家の周りに集まっていることに気付いて胃が痛くなる。

「……おばあちゃんね、お母さんと一緒に住むのが辛いなら隣町の学校に転校したほうがいいと思うの。なるべく寮生活にして…」

 おばあちゃんの部屋で寝ることにしたあたしは、隣で顔を覆って静かに震える背中を擦った。

「一花ちゃん、幸せを諦めてはいけないの。おばあちゃん、ずっと貴方のために何かをするべきだった。でも行動に起こせなかった」
「おばあちゃんは何も悪くないよ」
「…でも辛い思いを見過ごしてしまった」

 いままでお母さんに対して強く出れなかったおばあちゃんは、学校での話を聞いて二倍も苦しんでる。
 あたしはおぼろに見える月を襖の向こうに見つけた。
 このままでいいんだろうかと思っていた時期はあったし、日常から色が抜け落ちて、鏡に映る自分に嫌いだと投げつけることもあったけれど。
 でも、ちょっとずつ変わっている。