居間でお母さんと周のお父さんと顔を合わせる形で座り、隣にはおばあちゃんが腰を下ろした。あまりにも居心地が悪くて身じろいだ。

「……すみません」
「何がだ」
「思い出したく、なくて」

 そう言いながら泣いてしまっても、周のお父さんはまっすぐに視線で射抜く。

「十静さん、日を置いてから…」
「俺に見逃せと言うのか? 事態は深刻なんだ。一刻も早く解決に導かなければならない」

 困らせているとわかってる。おばあちゃんやお母さんが周のお父さんを止めることなんてできないのもわかっていたことだ。でも事実を全部話すことが恐ろしかった。

「一花、お願いだ。話してほしい」

 その場から逃げたくなっても、正義の味方である周のお父さんを裏切ることができなかった。あたしは涙を零しながら、あの辛い日々を記憶から掘り起こしていった。
 話していくうちに体中に穴が空いていく。
 こんなにボロボロになるなら、話したぶんだけ記憶がなくなればいいのに。全部、なかったことにしてほしい。そう思っても叶わないと知ってる。