「だ、誰から聞いたんですか。その話…」
「貴方のクラスの子が電話をかけてきて教えてくれたのよ。ほら、貴方とよく話してた子でおじいさんが雑貨屋を経営してて何度も行ったじゃない」
お母さんが答えを教えてくれる。あたしは茉莉のことだと気付いて、言葉を失った。
友梨と一緒に行動していたから、あたしのことを嫌っているはずだ。
それなのにどうしてお母さんに話したんだろう。
―「うちは決めたの。いじめられてるひとを見て見ぬふりをしないって…」
―「本当に? 正しいひとの味方なわけ?」
お昼休みに話しかけてくれた茉莉の姿を思い出す。まさか、見て見ぬふりをしないって本当だったんだろうか。
「いつからいじめられてるんだ。写真部を辞めたことと関係しているのか」
野球部で起きたことを周のお父さんに話そうと口を開いた。はく、と唇が動いても言葉が出てこない。
「一河茉莉と名乗った彼女は俺の交番に電話をかけてきた。彼女は終始泣きそうな声だったから、相当な勇気がいったはずだ。一花、お前も勇気を出して話してくれないか」
ついうつむいてしまうと、周のお父さんが「顔を上げろ」と言った。