仕事中じゃないのにスーツを着ていて、いつも近所のひとの噂を聞きだす執念深さ。お父さんが町の偉いひとだとか、夫が議員さんだとかいろんなことは聞いてる。

 隙間なく自分の周りを固めている友梨のお母さんは、例え子ども相手だろうと容赦なく質問するし責めてくる。

―言わなくちゃ。あたしが周と一緒にいたくて、…違う……ひとりになりたくなくて。

「本当ならやめてあげてくれないかしら。もう高校生でしょう。いつまでも友梨乃と周静くんに依存してないで、自立しなくちゃ」
―言うの。すみません、ひとりで大丈夫ですって。もう邪魔しません…って。
「返事、どうしたの」

 言葉が出ないあたしを睨んだ友梨のお母さんに、呼吸が乱れていく。
 言わなくちゃって思えば思うほど、視界が狭まって息苦しい。

「すみ、ません。…もう邪魔しません」
「それならいいの。ちゃんとあした、何があったか教えてよね。貴方のお母さんはすぐに出て行ってしまって聞きだせないから」

 ヒールの音を立てながらさっさと立ち去る友梨のお母さんを見送ると、足が突然震えだした。