期待しそうになる胸を抑えようと服を握りしめて、そこに仕舞っていたお守りの存在を思い出した。

「うちが怖いのは周静のほう。アイツ…むかしから普通じゃないって思ってたし、お父さんが警察官でしょ。何かあったら真っ先に周静を優先しそうじゃん」
「周のお父さんはそんなひとじゃないよ。いつも正しいことを言って、守ってくれるひとだから」
「本当に? 正しいひとの味方なわけ?」
「うん、本当に」

 そこまで言ってお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
 立ち上がってハンカチを見下ろすと、塩尾瀬のほうを見た。

「貰っていいの? こんな素敵なハンカチ…」
「いいぜ、そのつもりで買ったし」
「ありがとう」

 にやけそうになる頬を抑えつつ、スカートのポケットにハンカチを押し込んだ。

「…一花、って呼ぶから。一花も茉莉って呼んでね」

 先に教室に帰った彼女を見送ると、塩尾瀬はカバンと道具が入った袋を持ち上げる。

「様子見だな」

 あたしは期待しちゃダメだよ、と心の中で唱えながら塩尾瀬の隣に並んで教室に向かった。