「浅咲さんちょっといい?」

 お昼休みに廊下であたしを引き止めたのは、ポニーテールを揺らす一河さんだった。
 塩尾瀬の提案で裏庭に向かうと、一河さんが気まずそうに花壇を見下ろした。

「…おじいちゃんの店に行ったって本当?」

 あたしは血の気が引いていく思いで頷くと、一河さんが深く息を吐いた。

「なんだよ。あの雑貨屋はひとを選ぶ店なのか?」
「…あんた、教室では口を開かないくせにここでは話すんだ」
「誰だって話したくねーヤツとは話さないだろ」

 蕾の様子を確認していた塩尾瀬が鋭い声で言う。
 一河さんはしばらく考え込んでいるのか、深呼吸を繰り返して口を閉ざした。
 重苦しい空気に何も言えないままでいると、一河さんがあたしをじっと見つめた。

「おじいちゃんから、久しぶりに一花がお店に来てくれたって話してきたのよ。いままでに何度も一花は元気かって聞いてきたけど、まさかいじめられてるなんて言えないし…」