土日を挟んで七月を迎えた。
塩尾瀬がバイトに行く前にさっさと水やりをするとのことで、土日は部活動なしで顔を合わせずに済んだ。そのおかげか、平然と挨拶することができた。
「おはよ」
「はよ、蕾出てきたぜ」
「わ、本当だ」
ショートケーキにのってるクリームみたいな形をした蕾に、思わず声が弾んだ。
「七月に入ったら植え替えできそうって言ってたよね」
「うん、まあ中旬ごろかな。あと応募する写真そろそろ決めねーと」
「こっちの千日紅は?」
「それもいいけど、お前の腕次第だな」
とんだプレッシャーをかけられたあたしは肩を竦めながら、可愛らしい蕾をカメラに収めた。応募するなら開花した写真が良かったけど、塩尾瀬が言うには八月になるらしい。
「これさっそくフィルムカメラで撮ってみていい?」
「いいけど、27枚しかないんだろ?」
「この蕾の形が好きだから」
懐かしいフィルムカメラを取り出し、まずパッケージを開けてダイヤルを回す。そしたらあとはシャッターを押すだけだ。
「さっそく一枚目だね。次はフラッシュを使ってもいいかも…」
「一花」
唸るような声に肩が震えあがる。声の方向を見て、その短い髪が怒りで逆立っているように見える彼に悲鳴を上げそうになった。