石造りの道を歩いて門を目指す。
あたしの家は玄関から門まで距離があって、その間に整った庭園や木々に止まった鳥を見るのが好きだ。
いまは梅雨の時期なので紫陽花が開花している。
門の向こうに飛び出た頭がふたつ見えて、慌てて駆け寄った。
「おはよ、友梨、周」
「ン、寝坊しなかったな」
「おはよう、一花」
十歳のときから一緒にいてくれる縹 周静と満星 友梨乃はあたしの幼なじみだ。
親しみを込めて「周」「友梨」と呼んでる。
周は短く刈り上げた髪を掻きながら、太い眉を下げてあたしを見下ろした。
「行こうぜ」
周の隣に友梨が並んで、あたしはふたりの後ろを歩く。いつも周の隣は友梨が独占しているけど、あたしは何も言わない。腰まで伸びた友梨の綺麗な髪を眺めて、会話が振られるのを待つだけだ。
「きょう転校生来るって先生言ってたよね」
「そうだったか? 寝てたかも」
友梨の言葉を頭の中で探ってみたけど、転校生なんてキーワードは引っかからなかった。