あんなにも雑貨屋に通っていたのに、写真部を退部してからは一度も行っていない。
おじいちゃんは元気だろうか。また会いに行っても迷惑じゃないか、なんて。
「行ってみようぜ、その雑貨屋」
「え、でも…バイトは?」
「一時間くらいなら平気。きょうは遅番だから」
「クラスの子のおじいちゃんが経営してるから、もしその子にばれたら」
「店に行ってたたき出すようなら、もう二度と関わらなくていいけどよ。そのじいちゃんは浅咲にとって、いじめてくる連中と同じようなひとだったか?」
「それは違う…、すごく優しいひとだった」
水やりを終えた塩尾瀬が道具を片づけながらあたしを見つめた。初めて目が合ったときと同じように澄んでいて、いつも逸らすことができない。
「会ってみたら意外にも大丈夫だった、なんてことはある」
「経験談?」
「…いや、俺の願望。俺も、会いたいひとはいるけど無理だろうから」
予鈴のチャイムがあたしたちを別れさせようとしている。あたしは手のひらを握りしめると、塩尾瀬と向かい合った。
「雑貨屋に…行ってみたい。あの初めに撮った写真を持って…」
勇気を出して言ってみると、塩尾瀬はあたしの気持ちを鼓舞するように頷いてくれた。