お昼休みに花の様子を見に行くと、あたしはカバンを肩から下ろした。
小さく息を吐くと、塩尾瀬が気遣った視線を向ける。
「無理しなくていいんだぜ」
「ちょっと、撮ってみたくて」
太陽の光を一身に浴びながら揺れている小さな葉っぱを見ると、どうしても撮りたくなった。この葉を見れるのは、いまだけなのだ。
カバンからカメラを取り出すと、とりあえず角度を考えながら撮ってみた。
「真正面からじゃなくていいの?」
「うん、花全体を撮りたくて」
「へえ」
あたしはカメラを塩尾瀬に渡すと「どうかな」と問うてみる。
「これ、帰りにコンビニで印刷してみようぜ」
「いいね、楽しみ」
久しぶりにデータが更新されたカメラを見つめる。
「浅咲、笑ってたほうがいいな」
不意にあたしの髪に触れた塩尾瀬は、柔らかな表情を浮かべながらすぐに手を離した。
「そ、そうかな…」
あたしは周にも感じたことがなかった胸の高鳴りに困惑しながら、塩尾瀬の表情を忘れられずにいた。