放課後、野球部に連れて行こうと友梨があたしの腕を掴む前に、塩尾瀬が声をかけた。

「行こうぜ」

 前みたいに言葉を詰まらせるあたしを見ても、塩尾瀬は逃げない。あたしの言葉を待ってくれている。

「…行く」

 あたしの言葉を聞いた塩尾瀬が腕を引っ張った。
 教室を出るときに友梨が「まさか付き合ってんの?」と聞いてきたけど、塩尾瀬は無視して下駄箱に向かった。まるで風にさらわれた気分だった。

「この百日草は品種によっていろんな形があるんだ。ドリームランドってやつは長期間咲き続けるし、ザハラはイエローが綺麗だ。俺がここに植えたのはベリーズのホワイト」

 植木鉢の花を見ながら塩尾瀬が教えてくれる。声が弾んでいて本当に花が好きなんだとわかった。

「どれくらい種類があるの?」
「どんくらいだろ。草丈とか花の付き方、花びらの枚数もいろんな種類があるから」

 太陽の光を一身に浴びながら揺れている小さな葉っぱ。