―何にもできない一花。
その言葉が頭の中で駆け巡り、声が途切れてしまう。
おばあちゃんはあたしの様子を見かねたのか名前を呼んでから、シミが増えた頬を動かして懸命に笑おうとする。
「ごめんなさいね、もう大丈夫だから…」
あたしが何を言っても、おばあちゃんはいつも大丈夫と言って片づける。
そのまま居間に向かおうと立ち上がったので、あたしもカバンを肩に引っ掛けてついていった。
「そうそう、きょうはお母さんが帰ってきてくれるみたいよ」
「…仕事優先でちっともあたしに興味ないくせに」
「そんなこと言わないの」
カバンにつけてる猫のキーホルダーはどこかにぶつけてしまったのか、やせ細ってしまったもやしのような悲しい見た目をしている。
「なんか食欲ないから、もうこのまま学校行くよ」
「朝ごはんはしっかり食べないと元気がでないわよ」
「おおぃ、千代花さん。野菜立派なもんだよ」