腕を引っ張られてあたしも屈むと、その小さな芽を見つめる。緑色の葉に白い筋が線を描いていて、これからどんな花が咲くのか、胸が高鳴った。
「……花、いつの間にか植えられてたんだね」
「俺が持ってきた」
「え、家から?」
「そ。植木鉢に入れて自転車のカゴに突っ込んでたからか、結構じろじろ見られたけど」
想像してみると確かに面白い。
ふ、と口角を持ち上げると、目じりが持ち上がったからか、溜まっていた雫が流れ落ちる。
「浅咲も園芸部に入って写真を撮ってほしいんだ」
「あたしが?」
「想像してみて。園芸部に入ったらどんな感じか」
自分が園芸部に入った姿を想像した。
塩尾瀬と花を見つめながら色んな言葉を交わす。
あたしたち以外に部員がいないから、ふたりで花を育てる―。
気楽で、温かくて…きっと楽しいだろう。
「…無理だよ」
あたしは懸命に生きてる花を見下ろしながら呟いた。
「何にもできないあたしに、周や友梨は居場所をくれた。だから、野球部にいないと…」
「野球部って男子のだろ。マネージャーか? それなら男でもできるだろ」
「うーん…、それは江連先輩と友梨が正式なマネージャーであたしは補佐みたいな」
「何すんの?」
「ボール拾い…」