きのう、塩尾瀬が屈んでいたところだと思い出して目を瞬かせた。
一部日が当たる場所があってそこに花壇が置いてあるけど、誰が花を育てようとしたのか謎のまま放置されている、はずだった。
「この学校園芸部がなくてな。部活動はひとりでも基本活動していいらしいし、俺も勝手に園芸部作って入部してんだけど」
「他に部員は?」
「俺だけ。気楽でいいぜ」
前まで枯れた花が無造作に横たわっていた花壇が、土ごと生まれ変わっていた。
しかも花が咲いていて、キイチゴみたいな形だった。
花壇の近くにはいくつか鉢植えが置かれていて、小さな緑の葉っぱが顔を覗かせている。
懸命に生きている芽を見ていると、なんだかあたしの目頭が熱くなった。
そのままするすると涙が零れていく。
「おい、泣くほど感動するか? まあ、俺も育てた花が開花したら感動するけど」