あたしはご飯を持ってきてなかったから、ぼんやりと窓の向こうを見た。
「一花、ばあさんは大丈夫そうか?」
周の声に肩を震わせる。友梨の顔色を窺いながら「ひとまずは」と言った。
「どうしたの?」
「きのう病院に行ったらしくて」
「だからお弁当ないんだ」
友梨がカバンを探って財布を取り出した。それを信じられない思いで見つめる。
「お金貸してあげるから何か買ってくれば?」
「…友梨、お金持ってたの?」
「なんのこと?」
とぼけた顔で言う友梨にあたしはまた喉が苦しくなった。
「お金は、別に大丈夫。お腹空いてなくて」
「せっかく友梨乃が親切にしてんのに、お前はひどいな」
「いいよ、周静」
心が震えるような視線が突き刺さって心臓が暴れそうになる。
―また雨降らないかな…。雨があちこちに当たって跳ね返る音を聞いてたら、ふたりの声なんて気にならなくなるはずだから…。