「野菜の値段とか、なんか計算が必要そうだし」
「おつかいができるじゃない」
「それくらいできるよ! スーパーとかホームセンターで買い物でしょ」
おばあちゃんは敷布団を三つ折りにたたんで、そのまま押入れに仕舞った。
「でも一花ちゃん、千円以上のものは暗算できないでしょう?」
「誰だってムリだよ…。それに高校では何分の何とか、ルートとか、ああいう難しい記号が出てくるの!」
あらそう、ととぼけたように言うおばあちゃん。
「それに今更頑張ったって全部遅いもん…」
「ッ…ケホッ」
「おばあちゃん!」
おばあちゃんが突然胸を押さえながら咳き込んだ。
恐る恐る背中を擦ってみる。骨が浮き出ているみたいでぞっとしてしまった。
「あ、あたしが布団いつも片づけないせいで…。ごめん、次からはやるから…朝ごはんだって…」