平坦な道が行き止まり、中央に設置されたカーブミラーがあたしの行く道を映している。
 このカーブミラーを左に曲がれば墓地に行くけど、右に曲がったらどこに通じるんだろう。
 ふたつの道を映すカーブミラーに「交通事故多発! 注意!」と書かれた看板が立てかけられている。
 傷ひとつない綺麗な鏡を見上げると、いつもはひとりぼっちのあたしが映るのにきょうは違った。

「職員室前の写真を見たんだ」

 その言葉を聞いて足が止まる。先に進もうとした塩尾瀬は傘からはみ出たあたしに気付いて、踏み出した一歩を戻した。
 唇を噛みしめてうつむくと震える両手が視界に飛び込んでくる。

―何か言わなくちゃいけないのに…声が、言葉が出てこない…。

 不意に右手が何かに包まれて肩が跳ね上がった。
 恐る恐る視線を向けると、塩尾瀬の大きな手があたしの右手を掴んでる。
 あたしの手よりずっと冷たい塩尾瀬の体温に、雨の中待ってくれていたことを実感した。

「今年の一月に入賞した写真、すげえ綺麗だった」